大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(行ケ)21号 判決

一 本願第一発明について

(一) 原告の主張(一)1について

1 本願第一発明の要旨によれば、本願第一発明における感光体の清掃手段は、弾性板状体を表面を摺擦に耐えうるように形成されている感光体の移動に抗するように感光体表面に当接して、転写後の感光体面に残留する現像剤をクリーニングするという構成のものであり、本願明細書および図面の記載(成立に争いのない甲第二号証の一ないし四)によれば、その作用は、感光体面に当接した弾性板状体の縁部が、それに対して移動する感光体面を摺擦して、その表面の残留現像剤をかき落すというものであると認められる。

2 他方、成立に争いのない乙第一号証(登録実用新案第五六九六九号、大正一〇年五月二五日登録)には、ゴム製板状体2または8の縁部を窓硝子面に当接移動させて摺擦することにより窓硝子面を清掃する窓拭器が、成立に争いのない乙第二号証(実用新案公報昭三五―一七六七四)には、板状ゴム片9の縁部を硝子面に当接、移動させて摺擦することにより硝子面を清掃するようにした硝子拭きが、成立に争いのない乙第五号証(大正一五年実用新案出願公告第二三一一四号)には、ゴム製摺擦板1の頭部2の縁部を硝子または金属鈑面に当接移動させて摺擦することによりそれらの面を清掃する器具が、成立に争いのない乙第七号証(実用新案公報昭三四―九五七九)には、ゴム製板状拭掃片6の縁部をタイル、硝子等の面に当接、移動させて摺擦することにより、これらの面を清掃する清掃器が、成立に争いのない乙第一〇号証(特許第八一七九九号、昭和四年公告第二号)には、回転する印刷機のインキング・シリンダーAの面に皮革またはゴム製の板4の縁部を当接して摺擦することにより、その面のインキおよび油をかき取るようにした印刷機のインキ掃除器が、成立に争いのない乙第一一号証(実用新案公報、昭二七―九九〇四)には、回転する印肉ロール1の面にゴム板5の縁部を圧接して摺擦することによりその面の印肉をかき取るようにした印肉清掃器がそれぞれ記載されていることが認められ、これらの記載によれば、本願の出願前、弾性板状体の縁部を被清掃面に当接させ、被清掃面をこれに対して相対的に移動させて該面を弾性板状体の縁部で摺擦することによりその面上の附着物をかき落して被清掃面を清掃するという技術思想が周知であつたということができる。

そして、このような技術思想は、その弾性板状体による清掃作用に着目すると、板硝子もしくはタイルの面または印刷機のシリンダーないしロールの面の清掃のみならず、表面が摺擦に耐える平滑面であれば、他の平滑面にも応用しうることは、当業者が容易に想到しうるところであるといわなければならない。

3 ところで、電子写真装置において感光体の表面を摺擦に耐えうるように形成することが引用例に記載されていることは原告において明らかに争わない。そうすると、前記1に述べたところを技術内容とする本願第一発明における清掃手段は、前記周知の技術思想を電子写真装置における転写後の感光体面の清掃に適用することにより容易に想到しうる程度のものというべきである。この点につき、原告は、技術分野の相違を主張するけれども、本願第一発明における清掃手段およびその作用は、清掃についての前記周知の技術思想と本質的な隔りはないといつてよく、単に技術分野の相違の故に、この周知の技術思想を電子写真の感光体面の清掃に適用することを格別困難ならしめる技術的問題も本件に現われた全資料では存在しない。ただ、本願第一発明では、清掃後に感光体を再用するため、周知の清掃手段に比べて清掃(現像剤除去)の完全を期する必要性が推認されるが、その目的達成のための板状体の部材、その当接方法等の具体的構成ないし限定は何ら記載されていない(感光体の移動に抗するようにその表面に板状体を当接するとの構成は、単に両体を相対的に移動させるように当接するとの趣旨にすぎないことが本願第二発明との関係から明らかであり、また板状体を弾性のものにすることは、清掃装置としては当然のことである。)。そうすると、本願第一発明の構成の困難性をいう原告の主張は、採用することができない。

(二) 原告の主張(一)2について

1 原告主張の作用効果(1)ないし(9)のうち、(4)および(8)以外の作用効果について

これらの作用効果は、表面が摺擦に耐えるように形成された移動する感光体面に弾性板状体を当接して感光体面を摺擦し、その面上の転写後の残留現像剤をかき落すという清掃作用にもとづくものであることは明らかである。ところで、前記周知の技術思想もその被清掃面を清掃する作用は右と本質的に相違はないから、これらの作用効果は、この周知の技術思想を電子写真の転写後の感光体面の清掃に適用した場合に当然予想しうるもので、格別意外なものではない。

2 原告主張の作用効果(4)および(8)について

被告はこれらの作用効果は、要旨外の構成にもとづくものであると主張するが、作用効果(4)は、そこにいう特定の装置が本願第一発明によれば不要となるということであり、作用効果(8)は本願第一発明における清掃手段により感光体表面から除去された現像剤は、清掃手段の摩耗層がそれに混りこんで再使用不可能な品質になることはないという趣旨であることは明らかであつて、このような作用効果は、本願第一発明における清掃手段自体に関するものであるといえるから、被告の右主張は採用できない。しかしながら、作用効果(4)は、毛刷子を清掃手段として用いた場合と対比した作用効果であつて、弾性板状体を清掃手段として用いた場合には、そのような原告主張の装置が不要であることは当然のことであり、したがつて前記周知技術思想から当然予想される作用効果である。また作用効果(8)も、弾性板状体を清掃手段として用いたために、ブラシ、ウエブを用いた場合のように、その摩耗層が除去された現像剤に混入しないものというものであるから、弾性板状体を清掃手段として用いる前記周知の技術思想を適用したときに、当然予想される作用効果ということができる。

二 結論

以上検討したところによれば、本願第一発明に関する審決の判断に原告主張の違法はないことに帰着する。

ところで、特許法三八条但書による併合出願は、複数の発明が一体となつた一個の出願であり、二以上の発明は一体として取扱わなければならないから、二以上の発明のうち一発明について拒絶理由があるときは、同法四九条によつて、その特許出願たる併合出願全部について拒絶すべき旨の査定をしなければならない(東京高裁昭和四九年(行ケ)九七号事件判決、昭和五二年一二月二三日言渡、無体集九巻二号六一二頁参照)。してみれば、本願第一発明につき拒絶理由ありとした審決の判断に違法がない以上、本願第二発明について審決に示された拒絶理由の適否を判断するまでもなく、併合出願である本件出願は拒絶すべきものであるから、審決には、この点についての結論に影響を及ぼす取消事由はないというべきである。

よつて、本件審決を違法としてその取消を求める原告の本訴請求は失当であるから棄却する。

〔編註その一〕 本件における特許請求の範囲および発明の要旨は左のとおりである。

(一) 表面が摺擦に耐えうるように形成した感光体を移動可能に支持し、その感光体の移動径路沿に、その感光体上に静電潜像を形成する潜像形成手段、感光体に現像剤を供給する現像手段、現像像を転写材に転写する転写手段、弾性板状体を有する清掃手段を設け、その清掃手段の弾性板状体を、感光体の移動に抗するように感光体表面に当接し、転写後の感光体面に残留する現像剤をクリーニングして感光体を再用することを特徴とする電子写真装置

(二) 特定発明に於て、弾性板状体を感光体の移動方向に対抗して感光体表面に当接し、転写後の感光体面に残留する現像剤をクリーニングして感光体面を再用することを特徴とする電子写真装置

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面

<省略>

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